治験を取り巻く福岡県の現状を知る

ようやく生活者に認知されつつある「治験」という言葉。聞き慣れない言葉ですが、実は薬の開発において「治験」はなくてはならない大切なステップです。
私たちが日常的にお世話になっている薬は、多くの方々に献身的な協力を頂いているからこそ、世の中に登場できているのです。
今回は、被験者(治験)支援業務を行っている営業のお二人に、治験を取り巻く環境と、地方での治験の状況をインタビューしてみました。

御社では平成14年から約12年間、被験者(治験)支援事業を取り組んでいますが、立ち上げ時期から今日まで
事業を取り巻く環境はどう変化していますか?

HUMA創業時の12年ほど前は「治験」さえほとんど知られていませんでした。製薬メーカーはもちろんのこと、実施をする病院の認知も低いものでした。
ここ5年ほどで営業活動のかいもあって、だいぶ知られてきている印象です。まず病院のお医者様の間での認知が上がり、その影響もあって3年ほど前から薬品メーカーの認知も上がってきています。試験の計画段階から、被験者を集める選択肢のひとつとして募集会社を使う、というスタイルに変わってきています。世の中全体でも、治験の認知そのものが広がっていることを感じます。私たちの会員が50万人に増えていることもその顕れだと考えています。被験者を集める被験者支援事業自体の認知度アップが課題ですが、これからますますニーズは高まっていくと思います。

首都圏以外では参加できる治験が少ないイメージがありますが、福岡など地域での治験実施状況に特徴はあるのでしょうか?

首都圏と地方との認識の差は徐々に縮まってきています。新薬の治験の場合は人口比率に比例するので、首都圏、大阪、名古屋といった大都市圏での治験件数が多いのは確かです。いっぽうジェネリック医薬品に関しては、治験を実施する施設がその地域にあるかないかが普及に大きく関わってきます。福岡や福井、北海道はいまジェネリック医薬品の治験が盛んなのですが、とくに福岡に限っていえば病院施設が積極的に治験をおこなっていて、ニーズも多様化してきています。糖尿病の治療薬ひとつとっても複数の種類があって内容も細分化しているため、人を紹介する際のハードルも以前に比べて上がっているのが実情です。今後はニーズに応えられる質の高い支援がますます重要になっていくことが予想されます。

近年は、どのような治験が多いのでしょうか?

最近は、国の方針もあってジェネリック医薬品の開発が活発で、それに合わせて治験の必要性も以前とは比べようもないほど高まっています。福岡でもジェネリック医薬品の被験者の方を、もっと多く紹介できればと考えています。ジェネリック医薬品を出すための試験は「生物学的同等性試験 」といいます。 既に承認されている新薬とまったく同等であると証明するための試験で、効果が新薬と同じでなければならないという決まりがあります。この治験でご協力いただくのが 20- 30代の健康な男性。若い男性に協力していただきたい治験案件はどんどん増えてきている半面、被験者の数は慢性的に不足しているのが現状です。

とくに福岡県で多い治験を教えてください。

今ご説明したジェネリック医薬品の「生物学的同等性試験 」が主な実施試験になります。病気の数だけあるといわれるほど治験対象の医薬品はたくさんありますが、福岡ではそのほとんどを実施しています。「生物学的同等性試験 」の具体的な流れは、飲み薬を飲んだあとに採血と採尿をおこない経過をみることが基本です。被験者をA/Bグループふたつに分けて、まずAグループは新薬 、Bグループはジェネリック医薬品を2泊3日で投与し、採血尿検査などの薬物動態試験を行います。さらに一週間後、ABグループに逆の医薬品を飲んでいただき同じ試験を行い、効果が同等であることを確認します。試験の行程で痛みを伴うのは採血で注射器を使用するときぐらい。飲み薬の服用が主な試験内容なので、痛みを伴うようなことは、ほとんどありません。

試験の安全性は、どう担保されているのですか?

参加する前に、病院で同意説明が行われ、そこでしっかりと薬の説明や試験の内容などが詳細に説明されます。それを聞いた上で参加するしないを、本人が決める形になります。本人の同意なしに試験が行われることは絶対ありませんので、実際に行って説明を聞き納得いただけなければ、同意せずに帰っていただいてかまいません。万が一の保障についてもご説明します。またいちど治験を受けた方の健康を守るために、試験後3か月間は次の試験に参加できないことになっています。承認前の薬ですので、重複して服用してしまうと、もしもの場合にどの薬が原因だったのかなど追跡調査ができなくなってしまうからです。法的な規則ではないのですが、安全を担保するために治験実施計画書(プロトコル)に定められています。

福岡県の治験では、年齢・性別等で案件のバラツキはありますか?

治験内容の性格上、圧倒的に20ー30代の男性が求められています。女性は月経があり体調にばらつきがあるためです。「生物学的同等性試験 」で正確なデータを取得するためには、どうしても男性が必要になるのですね。とはいっても、女性専用の医薬品も多く、今後は性別を超えて、また世代的にも年齢的にも、もっと幅を広げて試験を実施していくことが課題になっています。 とくに九州に関して、もっと治験の必要性を訴えていきたい。現在、福岡で治験を受ける人の中で、いちばん多いのは圧倒的に福岡の人です。次いで熊本。3位は鹿児島からでしょうか。とはいえ、まだまだ受けていただける人は少なく、東京で募集をして来てもらっているほど。ただ交通費の負担も大きいため、九州の人が一人でも多く参加していただけるようにしたい、と強く思っています。

とくに福岡に特化した場合、治験の社会的意義にはどんなものがあるでしょうか。

多くの人々の病気の治療に貢献できるということが、治験に参加することの大きな意義だと思います。福岡の人は、正義感が強く行動力がある若い人が多い。人のためになる社会的意義のあることだと知るとほっとけない、という気質があります。そういった人たちと一緒に、治験を盛り上げていく気運を作りたいです。そんなムーブメントを作っていきたいですね。いま実質的にジェネリック医薬品の治験に関して、福岡は全国で第一位かもしれません。これを柱にして福岡から治験自体を盛り上げる気運を作りたいと思います。

今から治験に参加したいと考えられている福岡の人に向けて、一言お願いします。

強調したいことは、治験を行わないと世の中に薬が出回らなくなってしまいますので、ぜひご協力をお願いしたい、ということなんです。一般にいちばんご心配されることは、治験の安全性についてです。これについては、治験を担当するドクターやスタッフが、なによりも安全面をいちばん重要に考えているので、ご安心いただきたいとお願いしています。とはいいながら、治験自体「なにをするのか、わからない」という理解不足がまだまだ多く、それが参加の妨げになっていることも事実です。治験は安全性にとても配慮されていて、安心して受けて良いものだと納得してもらうには、中身をきちんと理解してもらえる啓発が大事であることを痛感しています。実際、1度治験に参加した人のリピート率は非常に高く、このことからも安全性が非常に高いものであることを理解していただけるはずです。

株式会社ヒューマ 被験者支援事業部